ノバルティスが特に力を入れている専門職のひとつとして、メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)があげられます。MSLは、医薬品の上市前から上市後に至るまで、医師やコメディカルなどとの科学的なディスカッションを通じて、医療における課題やニーズを明らかにし、疾患啓発や医療情報の提供、医薬品の適正使用の推進などを行うことで、患者さんへの貢献を目指します。この職務の仕事内容ややりがいから、キャリア形成、求められる人物像などについて、ノバルティスならではの強みを踏まえ、MSLとして働く二人の社員に語ってもらいました。

interview①

プロフィール

向出悠一(Yuichi Mukaide)

Medical Affairs Medical Science Liaison General medicine MSL4

勤務地:本社

薬学部薬学科卒。大学時代は医学英語を専攻し、米政府関連の医療機関で実習したり、米製薬企業のスタッフとコミュニケーションをとったりするなど、グローバルに通用する実践的スキルを習得。卒業後、ノバルティスに入社し、MRを経てMSL職に就きキャリアを積む。

小峰瞳子(Toko Komine)

Medical Affairs Medical Science Liaison Hematology MSL2

勤務地:大阪事務所

薬学部薬科学 博士了。大学の研究室時代は不妊治療の研究に取り組み医薬品開発を目指すも、ノバルティスへの就職にともないMSL職に就く。医薬品開発とは異なるMSLの仕事内容に大きな魅力とやりがいを感じ、現在に至る。今後もMSLとしてスキルを磨き、キャリア形成を図っていきたいと考えている。

 

ノバルティスに入社しMSL職に就いた経緯、当初抱いた思いについて教えてください

小峰:私は、入社前にノバルティスのメディカル・サイエンス・リエゾン部(MSL部)でインターンを経験しました。そして、卒業後、そのまま入社してMSL部に配属され、今に至っています。

大学時代は研究に没頭し、MSLという仕事があるのを知らなかったのですが、インターン先を選ぶときに興味が湧き、経験してみたいと思いました。実際にやってみると、科学的な視点や論理的な思考が求められる点が非常に面白く、その魅力に引き込まれました。

Q:入社の際に、薬の開発に携わりたいという気持ちはなかったのですか?

小峰:もちろん、自然とその気持ちはありましたが、中立的かつ科学的な立場から、専門性高く医療従事者と対話を行うことにより、各種疾患領域のアンメットニーズを把握し解決に努めていくというMSL部の重要性にインターンで気付き、意識が変わりました。医師とコミュニケーションをとりながら医薬品開発の環境を整え、それが患者さんへの貢献につながることを実感できたことは、私にとって非常に重要な体験でした。

interview②

Q:向出さんの場合は、入社やMSL部に配属された経緯は、いかがでしたでしょうか?

向出:私は、大学卒業後、ノバルティスに入社してMRを10年ほど勤め、その後、社内公募でMSL部に異動しました。そもそも学生時代から、ノバルティスのある医薬品にすごく興味があり、その適正使用に携わりたかったというのがこの会社を選んだ動機でした。

しかし、残念なことにその薬が私のMR時代に、ある患者像に対しての使用が原則禁忌となり、急速に使用がされなくなってしまったのです。その時、医薬品を販売し定着させていくためには、むしろ上市前から医師との議論を通して適切な患者を特定し、医療課題を踏まえてしっかりと準備をすることの重要性を痛感し、一度、それに納得いくまで取り組んでみたいと思いMSL部を希望しました。

Q:それでは、MSL部に移ってよかったと?

向出:はい、その通りです。MSLを担当して5年になりますが、今は、異動時の思いがかなって、非常に充実した日々を過ごしています。

 

 

 

interview③

現在担当している疾患領域やMSLの仕事内容は、どのようなものでしょうか?

小峰:私は、MSL職に就いて約4年になります。ずっと血液腫瘍の領域で、白血病や希少疾患を担当しています。特にそれらの疾患について、医師とサイエンティフィックなディスカッションを行い、それを踏まえてインサイトをとりまとめ、社内の関連部署と共有を図ったりしています。

Q:仕事内容について、もう少し具体的に教えてください。

小峰:担当する疾患領域の専門医とアポイントを取って、一対一で直接面談することが中心的な業務となります。入社した当初はコロナの影響でリモート面談ばかりでしたが、最近は外勤で実際に会える機会が増えています。エリアは、関西から東海地区を担当しています。

面談では、学会の最新動向や重要なエビデンス、必要なデータの創出について話しています。自社の薬剤の有効性や安全性も示しますが、むしろ疾患ベースで患者さんの実態や治療法についてディスカッションし、専門医としての考えや潜在的な課題などを引き出すことを心がけています。

Q:医師とのディスカッション以外で行っている業務は?

小峰:ノバルティスとして行う医師向けの疾患啓発イベントなどの座長や演者を務めていただく際のサポートを行ったりしています。

 

 

Q:向出さんが担当している疾患領域と日常業務として行っていることは?

向出:私はMSLに移ってから、2年間循環器領域を担当し、その後、現在に至るまで3年間腎臓領域を担当しています。仕事内容は小峰さんと大きな違いはなく、医師との面談が中心です。

社内業務としては、面談でメディカル戦略に沿って得られたインサイトを分析し、それを社内向けのメディカル戦略に落とし込み、医薬品開発や営業に有効なものを選り分けて、それぞれの部門に共有したり、提案・提言したりしています。

また、自社講演会等での演題や内容についてのサポートも行っています。日頃から数多くの医師とお会いしているので、どういう内容に他の医師が興味を持っているか、あるいは知識が及んでいないのかというアドバイスを演者の医師にできるのです。

Q:「多くの医師」というのは、およそ何名くらいでしょうか? また、どれくらいの頻度で面談しているのですか?

向出:私の場合、北海道、東北、東京、東海、和歌山など幅広いエリアで、同じ領域の専門医を計数十人同時に担当し、最低でも1人につき1~3カ月に1回は面談をしています。面談の頻度もさることながら、医師の側も、疾患が希少だからこそディスカッションや情報を求め、貴重な時間を割いて会っていいただけるので、より有効な会話になるよう心がけています。特に面談では、新たな話題を毎回盛り込むようにしているため、事前準備に掛ける時間や労力はものすごく多くなります。しかし、それによってより多くの医師と信頼関係を築けると思うと決して苦にはなりません。

interview④

これまで、MSLとして担当した最も印象に残っている仕事ややりがいを感じたことについてお聞かせください。

小峰:私が担当している疾患の中で、貧血や血栓症が懸念される希少疾患があるのですが、日本における推定患者数は約1,000人しかいないため、どの施設のどの医師が患者さんを診ているのかという情報が、どこにも顕在化していませんでした。そのため患者さんがどこで治療を受けてよいかわからず、困難な状況に置かれていました。また、専門医の間でも、その疾患や治療法に関する最新情報やエビデンスを求める声が聞こえてきました。

Q:そのようなニーズに応えるために、医師とはどのようなディスカッションを行うのですか?

小峰:たとえば、「症状に応じた疾患のコントロール方法について知りたい」といった医師側のニーズや課題意識を踏まえて、それに対する解決策としての仮説と論証を準備して面談にのぞみます。ディスカッションですので一方的に情報提供を行うのではなく、活発な議論を行う中で、新たな気付きを与え、与えられ、意見の一致をみた時などは、大きなやりがいや達成感を感じることができます。

Q:それが、MSLとして患者さんへの貢献にもつながっていくということですね。

小峰:はい。医師の向こうにいらっしゃる患者さんのことは、常に意識しています。私が担当する希少疾患の医薬品は、すでに販売されていますが、上市したらMSLの役割は終わりではなく、それが適切に使われて患者さんの治療の向上に資することが、私たちMSLのミッションでもあるのです。

interview⑤

Q:向出さんにとって、やりがいを感じる仕事とは何でしょうか?

向出:私も今、腎疾患領域の希少疾患を担当しているのですが、こちらも全国に数百人しか患者さんがいないとされるなかで、日本における研究論文や疫学データはほとんどなく、どの医師が患者さんを診ているかわからない状況からスタートして、3年間対峙してきました。

医師とのやりとりを通して、患者さんの困りごと、アンメットメディカルニーズに近づき、患者さんにとってよりよいペイシェント・ジャーニー(患者の体験の流れ or 患者の治療過程)とは何かを医師とともに考え、一緒に作り上げていったり、どこに課題があるのかを科学的かつ疫学的な議論を踏まえて明らかにしていったりできたのは、私にとって、すごく大きな経験となりました。

Q:それが、MSLにおけるチャレンジであり、患者さんへの貢献でもあるということですね?

向出:その通りです。それこそ、私が担当している疾患は、患者数が非常に少ないので、日本から治験に参加をしていただける可能性のある施設を開発本部と一緒に探したり、数少ない同疾患の専門医と一から診断や治療のアンメットニーズについて一緒に考えることができたのは、MSLの妙味に尽きると言っても過言ではないでしょう。
特に、その疾患の治療薬は、承認を得る前のものであったこともあり、「医薬品の情報提供に関するガイドライン*」を遵守しつつ、医師とのディスカッションを重ねていきました。 

interview⑥

Q:今後、特に、新たに取り組んでみたいことだったり、チャレンジしてみたいことについて教えてください。

小峰:質問スキルを高め、会話の流れを医師方のニーズに合わせることで、ディスカッションの精度を上げ、今後の治療に貢献できるよう日々精進していきたいです。

また、将来的には、薬剤師さんや看護師さん、臨床検査技師さんなど、患者さんと直接接する機会の多いコメディカルの方々とも面談の機会を設け、現場の意見を取り入れていきたいと考えています。

 

 

 

向出:上市前の段階で、医師を通じて患者さんの困りごとや治療への期待を聞けるのは私たちだけです。その声を医薬品開発部門や営業部門にしっかりとつなげ、医師への疾患啓発に役立てていきたいと考えています。

また、将来的には、日本での素晴らしい取り組みや得られた患者さんの声を世界に発信し、日本のプレゼンスを高めるとともに、世界の医療の発展に貢献したいと考えています。

*医療用医薬品の販売情報提供に関するガイドライン

 

ノバルティスならではのキャリア形成やMSLとして働く魅力、求められる人物像について教えてください

小峰:私の場合、ノバルティスを通じてMSLという仕事を知ることができました。そこが、キャリアの大きな転換点になったことは間違いありません。かけがえのない仕事に巡り合えたことに感謝しています。

向出:ノバルティスのよいところは、多数の疾患領域でコンスタントに画期的な薬剤が上市され、それらの上市前から上市後まで、一気通貫で開発・育薬に携われるチャンスにあふれているということです。それがノバルティスでMSLとして働く大きな魅力です。

Q:キャリア形成に関する企業としてのサポートについて教えてください

小峰:他の部署と交流できるオンライングループがあったり、キャリアについて考えるコーチングカフェがあるなど、悩んだり疑問があるときは、すぐに相談できる環境が整っています。同じチーム内でも相談しやすい雰囲気があり、それは、働く側にとってありがたい社風です。

向出:多様なチャンスに恵まれている分、ピラミッド型のキャリア形成というよりジャングルジム型のキャリア形成が可能です。また、それに応じて外部研修も年に何回か受けることができたりと、様々なサポート体制も充実しています。このように、自分が思い描くキャリアに向けて力をつけていきやすいということもまた、ノバルティスならではの大きな特徴です。

Q:そのようなノバルティスのMSLに求められる人物像とは、どのようなものでしょうか?

小峰:一番重要なことは、サイエンスベースのディスカッションによって、医師と信頼関係を築き、新たな医療のあり方を切り拓いていくことについて、熱い気持ちを持てる人です。

様々な角度から疾患や治療を考え、自発的にリサーチもできますし、チームとして推進する喜びや他部署と同じ課題意識をもって協働できるのは、MSLならではの魅力です。興味を持たれた方は、ぜひ、目指していただきたいと思います。

向出:MSLに向いているのは、チャレンジを楽しめる人です。ノバルティスのMSLは、比較的個人の裁量が大きい分責任も重いのですが、ポジティブに取り組める人には、しっかりとした手応えが感じられる仕事です。

特に、医薬品の普及促進ありきではなく、患者さんファーストで疾患への対策を中心に医師にアプローチするのが、ノバルティスのMSLならではの特徴であり大きな強みです。また、MSLについても他部門同様、仕事の評価制度や社内表彰制度が整い、努力が報われる体制が整備されています。機会があれば、ぜひ、チャレンジしてみてください!
 

interview⑦