Jun 11, 2024

プレスリリース

報道関係各位

ノバルティス ファーマ株式会社

この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2024年5月25日(現地時間)に発表したものを日本語に翻訳(要約)したもので、参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については、英語が優先されます。英語版は、https://www.novartis.comをご参照下さい

 

  • 推算糸球体濾過量(eGFR)に関する副次評価項目データが、プラセボとの比較で6ヵ月間に数値的な改善を示した1。今後の医学学会でさらに6ヵ月の非盲検期の試験データを発表予定2,3
  • イプタコパンは良好な安全性プロファイルを示し、新たな安全性シグナルは認められなかった1
  • C3腎症は、補体第二経路の過剰活性化に起因し、約50%の患者で10年以内に腎不全に進行する超希少腎疾患4,5,6,7である。現在、C3腎症に対して承認された治療は存在しない7,8,9
  • イプタコパンは、C3腎症の根本的原因である補体第二経路に存在するB因子を標的として阻害する経口薬であり1、他の希少疾患にも後期開発プログラムが進行中11,12

 

2024年5月25日、スイス・バーゼル発―ノバルティスは本日、イプタコパンの第III相APPEAR-C3G試験における6ヵ月の二重盲検投与期の結果を欧州腎臓学会(ERA)学術集会のlate-breaking clinical trial sessionで発表しました1。支持療法に加えてイプタコパンで治療を受けたC3腎症患者では、支持療法とプラセボで治療を受けた患者と比較して、蛋白尿(24時間蓄尿による尿蛋白/クレアチニン比[UPCR]で評価)が6ヵ月時に35.1%の減少を達成しました(p=0.0014)1。多くの腎疾患において、蛋白尿の減少は腎不全への進行抑制と相関する代替マーカーとしての認識が高まっています12,13

イプタコパンは、成人のC3腎症患者を対象に開発されている、補体第二経路のB因子を阻害する経口薬です1,2,3。成人C3腎症への適応に関して、FDAやEMAを含む規制当局に対する申請が2024年後半に予定されています。

C3腎症および免疫複合体型膜性増殖性糸球体腎炎(IC-MPGN)患者のアウトカム改善に取り組むデンマークの非営利団体、CompCureの創設者Marianne Silkjær Nielsenは、以下のように述べています。「C3腎症は見過ごされがちで深刻な疾患で、若いうちに発症することが多い疾患です。C3腎症患者の予後は不良で、患者の約半数は診断されてから10年以内に透析または移植を必要とする腎不全に進行します。現在、C3腎症に対して承認されている治療法はありませんが、この疾患に特化して開発される潜在的な新規治療法の研究は、患者のアウトカムを改善し、この疾患がもたらす感情的、身体的、および社会的な影響を弱められる希望を私たちに与えてくれます。」

副次評価項目である腎機能指標の推算糸球体濾過量(eGFR)に関する補足データにより、プラセボと比較してイプタコパン投与では6ヵ月間で+2.2 mL/min/1.73 m2(p=0.1945)の数値的改善が示されました1。本試験ではイプタコパンの安全性プロファイルが良好であることも示されており、新たな安全性シグナルは認められませんでした1

Newcastle University、Faculty of Medical Sciences補体治療教授兼名誉顧問腎臓専門医で、APPEAR-C3G治験運営委員のDavid Kavanagh教授は、以下のように述べています。「この結果は患者にとっても、C3腎症における今後の治療法の可能性にとっても画期的なマイルストーンです。C3腎症の顕著な特徴は、補体第二経路と呼ばれる免疫系の一部が過剰に活性化することであり、これによって腎臓が損傷され、多くの患者で重度の腎機能低下を引き起こします。現在用いられている治療法は、C3腎症の根本的な病態に対処するものではなく、しばしば重大な副作用を伴い、疾患の負担を増大させるものです。イプタコパンはC3腎症における補体第二経路を標的とした初めての治療薬候補です。安全性プロファイルに加えて、腎障害および腎機能の指標に対して本試験で示された効果は、患者および臨床現場にとって心強いものです。」

APPEAR-C3G試験では、6ヵ月間の二重盲検投与期の後、さらに6ヵ月間の非盲検投与期を設けプラセボ投与歴のある患者も含め、すべての患者にイプタコパンが投与されます2,3。これらのデータは、準備が整い次第、医学学会にて発表する予定です。

ERAで当社はまた、希少疾患ポートフォリオ全体にわたって新たなデータを発表します。その内容は、IgA腎症に対する治験薬atrasentanの第III相ALIGN試験の36週時点の中間解析結果、C3腎症に対するイプタコパンの第II相継続試験における33ヵ月時点の長期有効性・安全性データ、IgA腎症に対する治験薬zigakibartの1年間の第I/II相データ、C3腎症および非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)に対するリアルワールド試験のデータなどです14,15,16

ノバルティスの循環器・腎臓・代謝デベロップメントユニットのグローバルヘッドであるDavid Soergel, M.D.は、「私たちの目標は、革新的な治療選択肢を発見、開発、提供することによって、希少腎疾患患者の治療に変革をもたらすことです。APPEAR-C3G試験の結果は、根本的な病態生理学的要因標的とし、さまざまな希少疾患に臨床的に重要なアウトカムをもたらすイプタコパンの可能性を示すエビデンスが増加しつつあることをさらに裏付けています」と述べています。

APPEAR-C3G試験について

APPEAR-C3G(NCT04817618)試験は、C3腎症患者を対象にイプタコパン(200 mg)の1日2回経口投与の有効性および安全性を評価するための第III相、多施設共同、無作為化、二重盲検、並行群間、プラセボ対照試験です2,3。成人C3腎症患者に加え、別のコホートで青少年C3腎症患者の試験登録が進行中です2,3。本試験は、成人患者が支持療法に加えてイプタコパンまたはプラセボに1:1の割合で無作為化された6ヵ月間の二重盲検投与期、それに続いて(二重盲検投与期にプラセボを投与された患者を含め)すべての患者にイプタコパンを投与する6ヵ月間の非盲検投与期で構成されています2,3

二重盲検投与期の主要評価項目は、プラセボと比較したイプタコパンにおける24時間蓄尿によるUPCRのベースラインから6ヵ月時点までの蛋白尿の減少です2,3。非盲検投与期の主要評価項目は、両群におけるベースラインから12ヵ月時点の蛋白尿減少、およびプラセボ群における6ヵ月時点から12ヵ月時時点までの蛋白尿減少です2,3。二重盲検投与期の副次評価項目は、eGFRの変化量、複合腎エンドポイント(ベースラインからのeGFR低下≤15%およびUPCR≥50%)を満たした患者の割合、糸球体の炎症の変化(腎生検における疾患活動性スコアで評価)、患者報告による疲労の変化(慢性疾患治療-疲労の機能スコア[FACIT-Fatigue score]で評価)、安全性、および忍容性です2,3

イプタコパンについて

イプタコパンは、補体第二経路のB因子を標的として阻害する経口薬です1。 

イプタコパンはノバルティスで発見され、現在C3腎症、aHUS、IC-MPGN、LNなどのさまざまな希少疾患を対象として開発が進められているため、これらの適応症における安全性・有効性プロファイルはまだ確立されていません2,10,11,17。これらの適応症に対して、イプタコパンが市販される保証はありません。

イプタコパンは、希少血液疾患である発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の成人患者の治療薬として2023年12月にFDA、2024年5月にはEMAの承認を受けました21,22

C3腎症について

C3腎症は進行性の超希少腎疾患であり、主に小児および若年成人で初発します4,5,6,20。毎年、全世界で100万人あたり約1~2人が新たに膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)に含まれるC3腎症と診断されます4

C3腎症では、免疫系の一部である補体第二経路の過剰活性化により、腎糸球体(老廃物を濾過し、血液から余分な水分を除去する血管のネットワーク)にC3というタンパク質が沈着します4,7,20,21,22。そして炎症および糸球体損傷が誘発され、蛋白尿、血尿、および腎機能低下が引き起こされます4,7,20,21,22。C3腎症患者の約50%では診断後10年以内に腎不全に進行し、この時点で透析および/または腎移植が必要になります6,7。55%以上のC3腎症患者は移植後に疾患の再発を経験しています23,24,25,26

希少腎疾患におけるノバルティスの取り組み

ノバルティスの腎臓病学における歩みは40年以上前に始まり、シクロスポリンの開発および導入により移植と免疫抑制の分野を再構築する一助となりました。当社は、腎疾患と共に生きる患者の生活を一変させるという大志を今も抱き続けています。
当社のポートフォリオを通じて私たちは、IgA腎症、C3腎症、aHUS、IC-MPGN、LNなどの希少疾患を抱える人々が直面しているアンメットニーズに対処するための潜在的な治療選択肢を探索しています。これらの疾患の根本原因を標的とする革新的な治療選択肢は、腎機能の保持、透析や移植を必要としない生存期間の延長に役立つ可能性があります。

免責事項

本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了承ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。

ノバルティスについて

ノバルティスは、革新的医薬品の研究、開発、製造、販売を行うグローバル製薬企業です。ノバルティスは、患者さん、医療従事者、社会全体と共に病に向き合い、人びとがより充実した健やかな毎日が過ごせるため「医薬の未来を描く (Reimagining Medicine)」ことを追求しています。ノバルティスの医薬品は、世界中で2.5億人の患者さんに届けられています。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
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以上

参考文献

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  2. ClinicalTrials.gov. NCT04817618. A Multicenter, Randomized, Double-Blind, Parallel Group, Placebo-Controlled Study to Evaluate the Efficacy and Safety of iptacopan (LNP023) in Complement 3 Glomerulopathy (APPEAR-C3G). Available from: https://clinicaltrials.gov/study/NCT04817618. Accessed May 2024.
  3. Bomback AS, Kavanagh D, Vivarelli M, et al. Alternative Complement Pathway Inhibition with iptacopan for the Treatment of C3 Glomerulopathy – Study Design of the APPEAR-C3G Trial. Kidney Int Rep. 2022;7(10):2150-2159. doi:10.1016/j.ekir.2022.07.004
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