Mar 27, 2025

プレスリリース

報道関係各位

ノバルティス ファーマ株式会社

ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ジョンポール・プリシーノ、以下「ノバルティス ファーマ」)は、本日、「イラリス®皮下注射液150mg」(一般名:カナキヌマブ(遺伝子組換え)、以下「イラリス」)について、既存治療で効果不十分な成人発症スチル病(AOSD)に対する効能または効果の適応追加承認を取得したことをお知らせします。

AOSDは、高熱、関節炎および皮疹などを特徴とする16歳以上の成人に発症する全身性の炎症性疾患で、指定難病とされている希少疾患です。AOSDの原因は解明されていませんが、免疫系が過剰に反応することで発症すると考えられています。白血球の一部である単球やマクロファージが過剰に活性化され、炎症性サイトカインを大量に産生することで、体内で強い炎症反応が引き起こされると推定されています1

AOSDの治療は、炎症を抑えることを目的とした副腎皮質ステロイド(ステロイド)の全身投与が主となります2。しかし、ステロイドによる治療は長期に及ぶことが多く、感染症の増加や骨粗鬆症などの副作用が懸念されます3,4。また、ステロイド治療による効果を得られない場合は、免疫抑制薬の併用または生物学的製剤の使用を検討することがありますが2、これらの薬剤でも十分な効果を得られない患者さんもおり、新たな治療選択肢が求められています。

イラリスは、AOSDの病態において重要な役割を果たす炎症性サイトカインの一つであるヒトインターロイキン-1ベータ(IL-1β)に特異的に結合することにより、IL-1βとIL-1受容体との相互作用を阻害します。これにより、IL-1βが引き起こす炎症反応を抑えることが期待されます。

この度の追加承認は国内第III相試験(G1302試験)のデータに基づいています。ステロイド治療を行っても効果不十分なAOSD患者において、イラリス4mg/kgを4週間隔で皮下投与した結果、疾患の活動性、炎症初見、関節炎および発熱や皮疹といった全身症状を投与後早期から持続的に改善するとともに、ステロイドの減量も達成できました。イラリスの効能追加は、長期的な副作用の管理やより効果的な治療を求めるAOSD患者さんやご家族にとって、新たな治療選択肢として期待されます。

今回の追加承認について、ノバルティス ファーマの代表取締役社長であるジョンポール・プリシーノは、次のように述べています。「AOSDの治療には、長期的な副作用の管理やより効果的な治療方法を確立することの必要性といった課題がありました。イラリスの効能追加により、AOSD患者さんの治療選択肢を広げ、より前向きに健やかな生活を送れるようになることを心から願っています」。

国内第III相試験(G1302試験)について

本試験は、ステロイド治療を行っても効果不十分なAOSD患者14名を対象とした非盲検、非対照試験で、イラリス1回4mg/kgを4週間隔で皮下投与しました。その結果、有効性の主要解析対象11名のうち6名(54.5%)がステロイド薬の増量または静脈内投与をすることなく8週時点でAdapted ACR* 30を達成しましたが、95%の信頼区間(20.6%~88.5%)の下限値は事前に設定された基準値の40%を下回りました。なお、本剤を投与した全例(14名)におけるAdapted ACR 30を達成した患者の割合は28週、48週時点でそれぞれ75.0%、81.8%でした。また、ステロイド薬の減量が達成できた患者の割合は、28週、48週時点でそれぞれ58.3%(7/12名)、54.5%(6/11名)でした5
*Adapted ACR:米国リウマチ学会(ACR)が定めた基準を基にしており、AOSD患者の関節症状および全身症状を評価する総合的な指標の一つです。

イラリス(一般名:カナキヌマブ)について

イラリスは、炎症性サイトカインの一つであるヒトインターロイキン(IL-1β)に対する遺伝子組換えヒト免疫グロブリンG1モノクローナル抗体であり、IL-1βに結合し、その活性を中和することで炎症を抑えます。米国および欧州では2009年にクリオピリン関連周期性症候群(CAPS)の治療薬として承認され、日本においても2011年9月に同治療薬として承認されました。2016年12月には既存治療で効果不十分な家族性地中海熱(FMF)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)および高IgD症候群(HIDS)(メバロン酸キナーゼ欠損症(MKD))の3疾患の効能または効果が追加されました。2018年7月には、既存治療で効果不十分な全身型若年性特発性関節炎(SJIA)に対して、さらに2025年3月には既存治療で効果不十分な成人発症スチル病(AOSD)に対する効能または効果が追加されました。

成人発症スチル病(AOSD)について

成人発症スチル病(AOSD)は、高熱、関節炎および皮疹などを特徴とする16歳以上の成人に発症する全身性の炎症性疾患で、指定難病とされている希少疾患です。AOSDの原因は解明されていませんが、免疫系が過剰に反応することで発症すると考えられています1。日本には約4,500人の患者がいると推定されます。

ノバルティス ファーマ株式会社について

ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置く革新的医薬品のグローバル製薬企業、ノバルティスの日本法人です。ノバルティスは、より充実した健やかな毎日のために、「医薬の未来を描く(Reimagining Medicine)」ことを追求しています。
詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.co.jp(link is external) 
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以上

参考文献

  1. 難病情報センター「成人発症スチル病(指定難病54)」2024年11月(https://www.nanbyou.or.jp/entry/132(link is external)、2025年1月6日情報取得)
  2. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等制作研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究班「成人スチル病診療ガイドライン2017年版[2023年Update]」2024年6月18日(https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00841/(link is external) 、2025年1月6日情報取得)
  3. Oray, M., Abu Samra, K., Ebrahimiadib, N., Meese, H., & Foster, C. S. (2016). Long-term side effects of glucocorticoids. Expert Opinion on Drug Safety, 15(4), 457-465. 
  4. van Staa, T. P., Leufkens, H. G., & Cooper, C. (2002). The epidemiology of corticosteroid-induced osteoporosis: a meta-analysis. Osteoporosis International, 13(10), 777-787. 
  5. 社内資料:成人発症スチル病患者を対象とした国内第III 相臨床試験(G1302 試験)

 

参考資料
イラリス®皮下注射液150mgの製品概要

製品名:
イラリス®皮下注射液150mg(ILARIS® solution for s.c. injection 150mg)

一般名:
カナキヌマブ(遺伝子組換え)注射液

効能または効果(下線部が今回追加):

  •  以下のクリオピリン関連周期性症候群
    • 家族性寒冷自己炎症症候群
    • マックル・ウェルズ症候群
    • 新生児期発症多臓器系炎症性疾患
  • 高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)
  • TNG受容体関連周期性症候群
    既存治療で効果不十分な下記疾患
  •  家族性地中海熱
  • 全身型若年性特発性関節炎
  • 成人発症スチル病
     

用法及び用量**:
〈クリオピリン関連周期性症候群〉
通常、体重40kg以下の患者にはカナキヌマブ(遺伝子組換え)として1回2mg/kgを、体重40kgを超える患者には1回150mgを8週毎に皮下投与する。十分な臨床的効果(皮疹及び炎症症状の寛解)がみられない場合には適宜漸増するが、1回最高用量は体重40kg以下の患者では8mg/kg、体重40kgを超える患者では600mgとする。最高用量まで増量し、8週以内に再燃がみられた場合には、投与間隔を4週間まで短縮できる。なお、症状に応じて1回投与量の増減を検討すること。

〈高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)〉
通常、体重40kg以下の患者にはカナキヌマブ(遺伝子組換え)として1回2mg/kgを、体重40kgを超える患者には1回150mgを、4週毎に皮下投与する。十分な臨床的効果がみられない場合には追加投与又は適宜漸増するが、1回最高用量は体重40kg以下の患者では6mg/kg、体重40kgを超える患者では450mgとする。

〈TNF受容体関連周期性症候群及び家族性地中海熱〉
通常、体重40kg以下の患者にはカナキヌマブ(遺伝子組換え)として1回2mg/kgを、体重40kgを超える患者には1回150mgを、4週毎に皮下投与する。十分な臨床的効果がみられない場合には追加投与又は適宜漸増するが、1回最高用量は体重40kg以下の患者では4mg/kg、体重40kgを超える患者では300mgとする。

〈全身型若年性特発性関節炎及び成人発症スチル病
通常、カナキヌマブ(遺伝子組換え)として1回4mg/kgを、4週毎に皮下投与する。1回最高用量は300mgとする。

承認取得日:
2025年3月27日

製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社

**「用法及び用量に関連する注意」の詳細については、電子化された添付文書(電子添文)をご覧下さい。

 

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