プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2025年3月28日(現地時間)に発表したものを日本語に翻訳(要約)したもので、参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については、英語が優先されます。英語版は、https://www.novartis.comをご参照下さい。
第53条LRに基づく臨時発表
- 今回の適応追加により、アンドロゲン受容体経路阻害剤(ARPI)1剤の治療歴を有し、化学療法の治療歴が無い去勢抵抗性前立腺がん患者に[177Lu]Lu-PSMA-617の使用が可能となり、対象患者数は約3倍に増加
- [177Lu]Lu-PSMA‐617は、第III相PSMAfore試験において、2剤目のARPIを使用する群と比較し、進行または死亡リスクを59%有意に減少させ、画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)中央値を2倍以上延長*
- 約半数の患者は2剤目のmCRPC治療を受けることなく亡くなるため、より早期に使用可能な忍容性のある有効な治療法が必要1
- 米国の複数の放射性リガンド療法(RLT)製造施設は、今回の適応拡大による供給ニーズに十分対応でき、業界をリードするインフラ整備により、患者へのRLTの供給を加速
2025年3月28日、スイス・バーゼル発 – ノバルティスは本日、アンドロゲン受容体経路阻害剤(ARPI)療法による治療歴があり、化学療法を遅らせることが適切と考えられる前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対して、米国食品医薬品局(FDA)が[177Lu]Lu-PSMA‐617(lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan)を承認したことを発表しました。
本適応症の拡大は、第III相PSMAfore試験の結果に基づいており、[177Lu]Lu-PSMA‐617治療の対象患者は適応拡大前の約3倍となります。この試験では、ARPI治療を受けたPSMA陽性mCRPC患者において、[177Lu]Lu-PSMA‐617は、ARPIの変更と比較して、画像診断に基づく進行または死亡リスクを59%減少(HR=0.41;95% CI:0.29、0.56;p<0.0001)させ、画像診断に基づく無増悪生存期間の中央値を2倍以上延長しました(11.6ヵ月 vs. 5.6ヵ月)*。
米国メモリアルスローンケタリングがんセンターの前立腺がん部門長であり、米国での試験の主任研究者であるMichael Morris医学博士は次のように述べています。「[177Lu]Lu-PSMA‐617の早い段階での使用は、mCRPC患者の治療パラダイムを大きく変える可能性があります。2剤目のARPI療法に比べ、進行をより遅らせる効果の高い標的療法となります。この承認は大きな前進であり、1剤目のARPI療法で進行し、化学療法を受けていないmCRPC患者さんに対し、明らかな臨床的利点のある治療への扉が開かれます」。
PSMAfore試験において、最終的な全生存期間(OS)解析では、[177Lu]Lu-PSMA‐617がハザード比0.91(95% CI:0.72、1.14)で数値的に死亡リスク減少の傾向が見られましたが、統計学的な有意差は示されませんでした。OS解析では、対照群から[177Lu]Lu-PSMA‐617の投与にクロスオーバーした割合が高かった(60.3%)ため交絡が生じました。IPCW(inverse probability of censoring weighting)法を用いてクロスオーバーの影響を調整したOSのハザード比は0.59(95% CI:0.38、0.91)でした**。
PSMAfore試験のその他の結果において、[177Lu]Lu-PSMA‐617は一貫して良好な安全性プロファイルを示しました。報告されたすべての有害事象のうち発現割合が高かった有害事象は主にグレード1-2であり、口喝(61%)、疲労(53%)、悪心(32%)、便秘(22%)でした。[177Lu]Lu-PSMA‐617は、その後患者が化学療法を受ける治療機会を損なうことはありませんでした。
毎年35,000人以上の男性が前立腺がんで亡くなっており、その発症率は上昇し続けています2。mCRPC患者の半数は、2剤目の治療を受けることなく亡くなってしまいます。ホルモン療法と化学療法はmCRPCにおいて重要な治療ですが、全ての患者さんに適しているわけではありません3。多くの患者さんとその医療従事者は、副作用のために化学療法を避けるか遅らせることを望んでおり、治療ガイドラインではARPIの複数使用を避けることを推奨しています4-7。
前立腺がん財団のCEO兼会長であるGina Carithersは次のように述べています。「治療ラインが進むにつれて結果が悪化するため、このタイプの転移性前立腺がんの患者さんとそのご家族は長い間、限られた治療選択肢と確証のない結果に直面してきました8。今回承認された[177Lu]Lu-PSMA‐617の適応拡大は、前立腺がんコミュニティにとって力強い前進です。治療の初期段階でより多くの選択肢が得られるようになり、患者さんが自分の希望を主張でき、腫瘍専門医や泌尿器科専門医と協力して最適な治療法を決めることができます」。
ノバルティスの米国プレジデントのVictor Bultóは次のように述べています。「今回承認された[177Lu]Lu-PSMA‐617の適応拡大によって、対象の患者さんが約3倍になり、放射性リガンド療法をがん治療の柱として確立することができます。ノバルティスは、RLT分野の先駆者として、すべての患者さんがこの困難な病気を乗り越えるための医療従事者への教育やリソース、および実践的な解決策の提供に尽力しています」。
ノバルティスのRLTの患者および施設サポート
ノバルティスは、RLTポートフォリオを有する唯一の企業として、患者さんのアクセスを確保するための強力なインフラを確立し、現在、プレフィルドシリンジを含む様々な投与方法で[177Lu]Lu-PSMA‐617を提供しています。RLT分野で比類のないカスタマーエクスペリエンスを持つノバルティスは、米国の約600のRLT治療施設に通常5日以内に[177Lu]Lu-PSMA‐617を供給し、迅速な治療開始を実現します。
ノバルティスは、RLTをより日常的な臨床に取り入れるための教育を、新設のRLT instituteを含む革新的なソリューションを導入しました。ノバルティスRLT Instituteは治療施設の設置に必要な放射線安全性に焦点を当てた教育プラットフォームであり、施設スタッフにRLTを安全に投与するための必要な知識を提供します。
ノバルティスの患者サポートは、治療を開始するための支援を提供し、保険適用範囲の理解や、経済的支援オプションの確認も含めてサポートします。患者または医療提供者は、1-844-638-7222で担当者に相談するか、https://us.[177Lu]Lu-PSMA‐617.com/support/novartis-patient-supportにアクセスすることができます。
[177Lu]Lu-PSMA‐617(lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan)について
[177Lu]Lu-PSMA‐617は、標的化合物(リガンド)と治療用放射性核種(放射性粒子、この場合はルテチウム-177)を組み合わせた放射性リガンド療法(RLT)の静脈内注射剤です。血中に投与された[177Lu]Lu-PSMA‐617は、膜貫通型タンパク質であるPSMAを発現する前立腺がん細胞などの標的細胞に結合します。細胞に結合すると、放射性同位元素からのエネルギー放出により標的細胞や近傍の細胞を損傷し、細胞の複製能力を阻害および/または細胞死を誘発します。
2つの第III相試験に基づき、[177Lu]Lu-PSMA‐617は、ARPI治療を受けたPSMA陽性mCRPC患者に対して、タキサン系化学療法の前後いずれでもrPFSを有意に改善し、忍容性が確認された安全性プロファイルを示す唯一のPSMA標的治療薬です。[177Lu]Lu-PSMA‐617は、化学療法が必要になる前のPSMA陽性mCRPC患者に対する最初で唯一の標的放射性リガンド療法です。
ノバルティスは、転移性ホルモン感受性前立腺がん(PSMAddition試験、NCT04720157)やオリゴ転移性前立腺がん(PSMA-DC試験、NCT05939414)を含め、疾患の早期段階での[177Lu]Lu-PSMA‐617の試験を実施しています。
* PSMAfore試験(NCT04689828)の第三回中間解析(データカットオフ2024年2月)で確認された結果。[177Lu]Lu-PSMA‐617は、2022年10月のデータカットオフ時の中央確認されたrPFSイベントに基づく主要解析で、主要評価項目を達成しました。
** IPCWはいくつかの仮定を前提とする確立された統計手法です。
ノバルティスの放射性リガンド療法(RLT)について
ノバルティスは、進行がん患者に対する放射性リガンド療法(RLT)により、がん治療のあり方を刷新しつつあります。RLTは、標的放射線のエネルギーを利用し、進行がんに応用することで、体内のあらゆる部位に存在する標的腫瘍細胞に対し直接治療を届けるように設計されています。
ノバルティスでは、RLTの幅広いポートフォリオを検討しており、新しいアイソトープ、リガンド、併用療法を探求し、膵消化管神経内分泌腫瘍(GEP-NET)や前立腺がんに加え、乳がん、大腸がん、肺がん、および膵臓がんに取り組んでいます。ノバルティスは、RLTの生産拠点ネットワークにおいて、グローバルな専門知識、特化したサプライチェーン、製造能力を確立しています。RLTの需要拡大に対応するため、米国ニュージャージー州ミルバーン、スペイン・サラゴサ、イタリア・イブレアにおける生産能力の増強に加え、米国インディアナ州インディアナポリスに最新製造施設をオープンしました。また、RLTの使用拡大を下支えし、製造ネットワーク能力を高め、米国西海岸の患者さんへの薬剤供給を最適化するために、米国カリフォルニア州カールスバッドに米国で三番目となるRLT製造拠点を設立しています。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了承ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、革新的医薬品の研究、開発、製造、販売を行うグローバル製薬企業です。ノバルティスは、患者さん、医療従事者、社会全体と共に病に向き合い、人びとがより充実した健やかな毎日が過ごせるため「医薬の未来を描く (Reimagining Medicine)」ことを追求しています。ノバルティスの医薬品は、世界中で約3億人の患者さんに届けられています。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
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以上
参考文献
- Shore ND, Laliberté F, Ionescu-Ittu R, Yang L, Mahendran M, Lejeune D, et al. RealWorld Treatment Patterns and Overall Survival of Patients with Metastatic Castration Resistant Prostate Cancer in the US Prior to PARP Inhibitors. Adv Ther. 2021;38(8):4520-40.
- American Cancer Society. Key statistics for prostate cancer. Accessed January 21, 2025. https://www.cancer.org/cancer/types/prostate-cancer/about/key-statistics.html
- Shore N, Heidenreich A, Saad F. Predicting response and recognizing resistance: improving outcomes in patients with castration-resistant prostate cancer. Urology 2017;109:6–18. [https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28797685/]
- Broyelle A, Delanoy N, Bimbai AM, Le Deley MC, Penel N, Villers A, et al. Taxanes Versus Androgen Receptor Therapy as Second-Line Treatment for Castrate-Resistant Metastatic Prostate Cancer After First-Line Androgen Receptor Therapy. Clin Genitourin Cancer. 2023;21(3):349-56.e2.
- EAU-EANM-ESTRO-ESUR-SIOG. Guidelines on Prostate Cancer, 2024. [https://uroweb.org/guideline/prostate-cancer]
- NCCN. Clinical Practice Guidelines in Oncology. Prostate cancer, v4.2024. [https://www.nccn.org]
- ESMO. Pocket Guidelines. Urogenital Cancers, 2023. [https://www.esmo.org/guidelines/pocket-guidelines-mobile-app]
- Moreira DM, Howard LE, Sourbeer KN et al. Predicting time from metastasis to overall survival in castration-resistant prostate cancer: results from SEARCH. Clin Genitourin Cancer 2017;15(1):60–66.e2. [https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27692812/]
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