プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2025年4月3日(現地時間)に発表したものを日本語に翻訳(要約)したもので、参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については、英語が優先されます。英語版は、https://www.novartis.com をご参照下さい。なお、本製品は日本では未承認です。
第53条LRに基づく臨時発表
- Atrasentanは、IgA腎症の支持療法にシームレスに追加することが可能で、リスク評価・緩和戦略(REMS)プログラムに該当せず基礎治療として使用可能1
- 第III相試験では、atrasentanはプラセボと比較して36.1%(P<0.0001)の蛋白尿減少を示し、蛋白尿は6週目から改善が認められ36週時点まで持続し、安全性も良好1,2
- IgA腎症は進行性の稀な腎疾患で、持続性蛋白尿を有する患者の最大50%が診断から10~20年以内に腎不全に進行3-9
- ノバルティスは、腎臓領域のポートフォリオにおいて1年以内に3つ目となるFDA承認を取得し、腎疾患の治療における変革を牽引する地位を確立
2025年4月3日、スイス・バーゼル発–ノバルティスは本日、米国食品医薬品局(FDA)により、強力かつ選択的エンドセリンA(ETA)受容体拮抗薬のatrasentanが、進行リスクの高い成人原発性IgA腎症患者の蛋白尿減少に対する適応で迅速承認されたことを発表しました。対象は尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)が1.5g/g以上と定義されています1。Atrasentanは、1日1回投与の非ステロイド性経口薬で、SGLT2(ナトリウム-グルコース共輸送体2)阻害薬併用の有無を問わず、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬を含む支持療法に上乗せすることが可能です1,2。
Atrasentanは、36週時点でプラセボと比較した蛋白尿の減少を評価する、第III相ALIGN試験の事前に規定された中間解析の結果に基づいて、迅速承認を取得しました1。AtrasentanがIgA腎症患者の腎機能低下を遅らせるかどうかは確立されていません。今後のIgA腎症に対する継続的な承認は、136週時点での推算糸球体濾過量(eGFR)の低下を指標としてatrasentanが疾病の進行を遅らせるかどうかを評価する、現在進行中の第III相ALIGN試験における臨床的有益性の検証が条件となる可能性があります1。eGFRのデータは2026年に得られる見込みであり、FDAの通常承認の裏付けとする予定です。
Stanford University Medical CenterのGlomerular Disease Centerの責任者兼同大学医学部腎臓内科教授で、ALIGN試験の治験責任医師兼治験運営委員でもあるRichard Lafayette, M.D., F.A.C.P.は次のように述べています。「今回の承認はIgA腎症患者にとって重要なマイルストーンとなるもので、REMSを必要とせず、既存の治療計画にシームレスに組み込める新たな選択肢をもたらしました。Atrasentanは、IgA腎症の主要なリスク因子である蛋白尿を効果的に減少させる選択的ETA受容体拮抗薬です。早期かつ決定的な治療は、腎不全に進行することが多い患者の予後を改善するのに極めて重要です」。
IgA腎症は進行性の稀な腎疾患で、免疫系が腎臓を攻撃し、しばしば糸球体の炎症と蛋白尿を引き起こします10。米国では年間で100万人あたり約13人が診断され、最も一般的な自己免疫性腎疾患の一つですが、疾患経過は患者ごとに異なります11,12。持続性蛋白尿を有する患者の最大50%が診断から10~20年以内に腎不全へと進行して、維持透析や腎移植を必要とすることが多い一方3-10、治療への反応に個人差があります12,13。異なる作用機序を持つ効果的な標的治療薬が複数あることは、医師が患者に最適な治療を選択するのに役立ちます12。
患者団体IgA Nephropathy Foundationの理事兼共同設立者のBonnie Schneiderは、以下のように述べています。「私の息子は、治療薬が承認されるずっと前にIgA腎症と診断されました。複数の治療選択肢があることは、患者とその家族にとって非常に有意義なことです。Atrasentanの承認によって、治療の選択肢が増え、患者ごとに影響が大きく異なる可能性のあるこの疾患に対して、それぞれにあった治療の機会が広がります」。
承認の裏付けとなるデータ
進行中の第III相ALIGN試験では、RAS阻害薬との併用でatrasentanを投与された患者は、プラセボと比較して36.1%(P<0.0001)の臨床的かつ統計学的に有意な蛋白尿減少を達成しました。その結果は6週目で認められ、36週時点まで持続しました1,2,14。AtrasentanのUPCRに対する効果は、試験の主要コホートにおいて、年齢、性別、人種、ベースラインの疾患特性(eGFRや蛋白尿のレベル)を含む部分集団間で一貫していました1。同様の治療効果は、RAS阻害薬とSGLT2阻害薬を併用投与した追加のコホートでも認められました(プラセボと比較してUPCRの37.4%減少)1。
ALIGN試験では、過去に報告されたatrasentanのデータと同様の良好な安全性プロファイルを有することが示されました1。Atrasentan投与群の患者の2%以上かつプラセボ群よりも高頻度に報告された有害事象は、末梢性浮腫、貧血、肝トランスアミナーゼ値の上昇です1。エンドセリン受容体拮抗薬の中にはアミノトランスフェラーゼの増加、肝毒性、肝不全を引き起こすものがあるため、医師はatrasentanの投与開始前および臨床的に必要な場合は投与期間中に肝酵素検査を実施する必要があります。Atrasentanは、重篤な先天異常を引き起こす可能性があります1。AtrasentanはREMSプログラムに該当しません。
腎疾患の治療に変革を
ノバルティスの米国プレジデントのVictor Bultóは次のように述べています。「本日のatrasentanのFDA迅速承認により、IgA腎症の治療の選択肢を拡大できることを喜ばしく思います。IgA腎症は、作用機序の異なる複数の治療選択肢が必要となる異質性が高い(heterogenous)疾患です。複数の開発候補品で構成される当社の腎疾患ポートフォリオは、幅広い患者集団を支え、IgA腎症の治療を前進させる体制を整えています。腎臓病学における長年の知見を基に、引き続きこの領域における我々の能力を急速に進歩させます。上市のたびに、最適な治療選択肢をより効果的に患者さんへ届けられるようになり、腎疾患の治療に変革をもたらす約束を果たしていきます」。
今回の承認は、ノバルティスが腎疾患ポートフォリオで過去1年に米国で取得した3つ目となります。ファビハルタは2025年3月と2024年8月にそれぞれC3腎症とIgA腎症でFDA承認および迅速承認を受けました15。ファビハルタは、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、免疫複合体型膜性増殖性糸球体腎炎(IC-MPGN)、ループス腎炎(LN)など、幅広い希少腎疾患を対象にも研究が進められています。これら試験では、適応症に対する有効性および安全性プロファイルを評価し、規制当局への申請の裏付けとなります。Zigakibartは、抗APRILモノクローナル抗体の皮下投与治験薬で、現在IgA腎症に対する第III相の開発段階にあり、2026年に結果が得られる見込みです16。
ALIGN試験について
ALIGN試験(NCT04573478)は、腎機能低下が進行するリスクのあるIgA腎症患者を対象として、atrasentanの有効性および安全性をプラセボと比較する、国際共同、無作為化、多施設共同、二重盲検、プラセボ対照の第III相試験です1,14。RAS阻害薬による至適治療にもかかわらず、ベースラインの総蛋白尿が1g/日以上で、生検でIgA腎症と確定診断された患者340名が、約132週間にわたりatrasentan(0.75mg)またはプラセボを1日1回経口投与するコホートに無作為に割り付けられました1,2。患者は、支持療法として最大耐量かつ安定用量のRAS阻害薬の投与を継続して受けます (RAS阻害薬に対する忍容性が良好でない場合を除く)1,2。また、SGLT2阻害薬を12週間以上に投与されている患者64名も追加コホートとして登録されています1,2。中間解析の主要有効性評価項目は、24時間畜尿によるUPCRで評価した腎不全のマーカーである蛋白尿のベースラインから36週時点までの変化です1,2,14。副次的および探索的目的には、eGFRで評価するベースラインから136週時点までの腎機能の変化、ならびに安全性および忍容性の評価が含まれています1,14。
腎疾患におけるノバルティスの取り組み
ノバルティスは、腎移植から始まった40年の知見を基に、腎臓の健康における画期的な進展を促進し、特にアンメットニーズの高い腎疾患に対する革新的な治療の探索を使命としています。これらの疾患はこれまでにファンディングや研究が十分に行われず、治療の多くが対症的な、または末期の疾患管理に比重を置き、しばしば多大な身体的、精神的、経済的な負担がかかっていました。ノバルティスのパイプラインは疾患の根本原因を標的として、腎臓の健康を守り、透析や移植への移行を遅らせるまたは防ぐことを目指しています。ノバルティスの目標は、患者さんが職場や学校、愛する人たちと過ごす生活を取り戻すことです。患者さんやアドボケート(擁護者)、医師、政策立案者と連携して、疾病の認知度を高め、診断を迅速化し、患者さんが早期に適切な治療が受けられるよう取り組みます。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了承ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、革新的医薬品の研究、開発、製造、販売を行うグローバル製薬企業です。ノバルティスは、患者さん、医療従事者、社会全体と共に病に向き合い、人びとがより充実した健やかな毎日が過ごせるため「医薬の未来を描く(Reimagining Medicine)」ことを追求しています。ノバルティスの医薬品は、世界中で約3億人の患者さんに届けられています。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
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以上
参考文献
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