厳しい言葉をかけることも役割の一つ
「『小児がん経験者だからといって、一般の方となんら変わりなく働くことができるので偏見は持たないでください』とお伝えしたい一方で、『晩期合併症を抱えながらも、社会に出て貢献したいと、もがいている人もいるので、門戸を開いて、まずは話を聞いてください』ともお伝えしたい。自立支援といっても、その二つの考え方があるので、難しいですね」
ただし、本人たちには、あえて厳しい言葉を使うこともある。
「がんだったからって特別扱いはされないよ」「あなただけじゃないよ」――。
そうした言葉を言えるのは、「第三者でありながら、第三者ではない」という距離感、多くの小児がん経験者と日々接し、病気のことをよく知っているからこそだ。
「『あなたが頑張ってきたのは本当に素晴らしいことだし、私はそれをちゃんと理解している』という信頼感がお互いにあるからこそ、強くも言えるのだと思います。『小児がんだったから』というフィルターを自分で作っても、社会は受け入れてはくれません。社会に対しては『偏見を持たないでください』と言っていますが、子どもたちにはむしろ、『世の中の人たちが偏見を持つのは当たり前かもしれない。あなたたち一人ひとりが自分自身で打開しなければ何にも解決しないよ』と伝えるようにしています。そうやって厳しいことも言ってあげられるのが私たちの役割の一つかなと思うので」
同会は、小児がんの患者や家族が不安を吐き出せる場所であり、病気で子どもを亡くした人が10年、20年経っても変わらず「●●くん・●●ちゃんの親」と呼ばれ、亡くなった子どもが確かに生きていたことを確認できる場所でもある。また、そんな従来からの役割を維持するとともに、治療を終えた小児がん経験者に寄り添いながら背中を押す場でもある。
「小児がんを罹患された患者さんやご家族にとって必要な場は一つではありません。いろいろな形で活用していただける会であり続けたいですね」
樋口さんが、今の仕事を始めて15年。
「0歳で発症した子は15歳になっていますし、10歳くらいで発症して今は結婚して子どもがいる人もいます。どんどん私を追い越して成長していっていますね。子どもたちが成長していく姿を見せてくれることで、私自身、いろいろなことを学ばせてもらっています。やっぱり子どもの力は素晴らしいですよね」
がんの子どもを守る会:http://www.ccaj-found.or.jp/
(2012年6月)